「サルコペニア克服プロジェクト研究会」発足に際して


「サルコペニア克服プロジェクト研究会」発足に際して

研究会会長  安部 孝(ミシシッピ大学客員教授)

 

最近、興味深い論文が公表された。

 

染色体末端を保護する働きをもつテロメア (telomere) の長さに関する研究である。
半世紀ほど前、ヒトの体組織から取り出した培養細胞では分裂回数に制限があり、
ある回数を超えると細胞は増殖を停止し、細胞の老化状態を迎えることが知られていた。

 

テロメアの長さは、この細胞分裂の回数に関与していると考えられている。
今回の研究 (Venturelli et al. Clin Sci 2014;127:415-21) では骨格筋の老化・減弱とテロメア長との関係が検討され、下肢筋群のテロメア長は暦年齢とは明らかな関係を示さないが、身体不活動とは密接な関係を示した。

 

つまり、だれでも年をとれば筋が減弱してくるのではなく、高齢者でも活動不足の者だけに筋の老化は発生するらしい。裏を返せば、高齢者でも適切な身体活動が確保されていれば、筋の若さは維持できることになる。

 

問題は「身体不活動」にならないために「どんな運動やスポーツ」を「どの程度」実践すれば良いのかである。
どんなスポーツや運動でも実践さえすれば、希望する効果が確実に現われ、それが健康に結びつくというものではない。

 

過激すぎる運動は呼吸循環系に多大な負担を与え、逆に健康を害することにもなりかねない。
不適切な運動負荷は、強すぎれば筋や関節の障害を招き、逆に弱すぎれば期待される効果は現われにくい。

 

運動経験や体力レベルに大きな差がみられる高齢者に適切な運動指導を行うためには、運動やスポーツを実践するうえでの正しい知識をもつことはもとより、最新エビデンスに基づく運動指針を共有する必要がある。

 

今回のプロジェクトによって得られた知識や経験が今後の高齢者指導に役立ち、ひとりでも多くの元気な高齢者がうまれ、それによって地域が活性化されることを切望する。

 

意欲に満ちた多くの指導者の今後の活躍に期待したい。

 

安部 孝(ミシシッピ大学客員教授)

 


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